神奈川県議会黒岩知事に対する討論

9月12日から始まっている第三回定例県議会。
会期が12月20日までと100日間あるため、14日本会議を開催し前半戦に提出された諸議案の評決を行いました。

近藤は、民主党かながわクラブ県議団30名を代表して議案に対する討論者に抜擢されました。
黒岩知事が就任して初めてとなる約150億円にものぼる本格的肉付け議案ということもあり、各メディアが注目する評決討論であっただけに近藤も思いのたけをぶつけてまいりました。
しかしながら、会派を代表しての討論だけに近藤の思いだけで討論を行うわけにはいきません。

本会議場、8常任委員会の団員の質疑をふまえての討論を行わなければならず、各質疑の概要が報告されるのが12日夜であり、討論作成に中1日しか時間を与えられという強行軍となります。

討論時間は約17分、約6000文字の討論になりますが原稿を以下掲載しますので拝読いただければ幸いです。

なお、あくまでも原稿であり本番の討論内容は本会議場の流れの中で変更されています。

「平成23年度第3回定例会討論」

民主党かながわクラブ県議団を代表して本日上程されました諸議案に対し、所管常任委員会における審議および審査結果を踏まえ、討論を行います。

まず始めに、知事就任から半年が経過いたします。
本定例会には、いよいよ知事のリーダーシップが発揮され「いのち輝くマグネット神奈川」の実現に向けた本格的な政策予算が提案されるものと我々そして県民も期待をしていました。

しかしながら、知事の選挙公約である新たなエネルギー政策、「4年間で200万戸分のソーラーパネルをつける」という事から、今回、報告されたスマートエネルギー構想にいたるまでの間、知事の選挙中の発言、5月の所信表明、第2回本会議での知事の答弁と、この第3回での新たな構想、それに関わる答弁、今予算委員会での質疑への答弁、そして予算委員会後の記者団への発言など、今日までの迷走は到底県民の理解を得られるものではありません。

知事の言うリーダーシップとビジョンの大切さはよく理解をしております。
震災や原発問題をはじめとする国難とも呼ぶべき状況の中で、県民はまさに知事の、政治のリーダーシップを求めております。
我々に求められるのは結果であり、成果をあげるためには多くの県民の協力が必要であり、成果をあげるまでのプロセスに必要なのは、県民に対する明確なメッセージ、我々のはなつ「言葉」なのであります。黒岩知事は、ジャーナリストとして「言葉にこだわり抜いてきた」とおっしゃられておりました。我々も政治家として言葉にこだわり抜いてまいります。
国難の中、905万県民の生命と財産をまもり住民福祉の向上の為にともに力を尽くして参りましょう。

まず、今回、報告されたスマートエネルギー構想についてです。
ソーラープロジェクトからかながわスマートエネルギー構想という新たな中長期的なエネルギー政策への提起を趣旨・考え方・当面のとりくみを、広く県民のものとなるための打ち出しを考えていただきたい。総合計画に位置づけ、行政計画をしっかり進めると伺いましたが、手法、施策については具体案までなかなかいたっていないのが現状です。当局が国の動向を踏まえつつ、取り組んでこられたのは十分理解しますが、新たな55万戸という目標についても、ソーラーバンクシステムやソーラーローン、市民ファンドなど大量設置へのスキームについて早急に詳細な計画と見通しが示され、行政計画に乗せていくための議論を始めなければなりません。来年7月実施、年度内に示すということですが、迅速で着実な取り組みが図られるよう求めるとともに、議会だけでなく、県民にも真摯な姿勢で、説明責任を果たしていただくように求めます。

次に総合計画についてです。(総務政策)
 今回示された「基本構想の変更」と「新たな実施計画」の工程案は、自治基本条例にある「県民や市町村意見が十分に反映される」に対する十分な時間が確保されるのか懸念致しております。
 一方で、プロジェクトについては2年間の期間設定であり、「スピード感」を持った考え方からの取組みになると期待をしているところであります。
 具体な数値目標も設定するとの答弁でしたが、具体的で重要なことであればあるほど、「スピード感」と同じだけ「意見集約と合意形成の過程」は不可欠なことであり懸念が払拭される取組みを求めます。
 また、当たり前のことでありますが、実施計画策定に伴い、新たな「財政見通し」なり「財政健全化の考え方」なりを明確に示し、一体となった提案が必要です。方向性の早期提示を求めます。

次に、定県第60号議案 平成23年度一般会計補正予算第3号についてです。
まず始めに、歳入について申し上げます。
本来ならば、知事選に伴い留保財源としていた県税収入見込み約50億円から2回の補正予算を引いた約31億円が今回計上される予定であり、かねてより黒岩知事の本格的肉付け予算を組むとの説明でもありました。
 しかし、震災の影響などを含めて今年度の県税収入は「当初予算額の確保が厳しい」とのことから、留保財源の確保が見込めず、今回の歳入計上は22年度からの繰越金22億、県債35億円等であり、財源・規模の視点から本格的肉付け補正なのか懸念が生じるところではあります。
 一方で、基金の積極的な活用など、厳しい中にも工夫や知恵を出した歳入確保と黒岩カラーを打ち出している部分もあると認識しています。
 今後は、繰越金の留保分や期限が迫る基金に対し、一刻も早期に有効的な施策に計上されるよう求めます。
 
次に、歳出に関連して申し上げます。
県地震災害対策の検討状況についてです。(防災警察)
地震津波対策に関する4つの会議での検討が進められていますが、津波浸水予測図及び県地域防災計画の素案を年内に早急に取りまとめ、早期に市町村に提示することを求めます。
次に、東日本大震災後の防災関連の補正予算についてです。3回の補正予算額約68億円の中で、都道府県が相互扶助の観点から行っている被災者の生活支援出えん金が約56億円ですが、これについては既に国から大部分が補てんされています。また、避難者のための民間賃貸住宅の借り上げ事業費が7億6千万円となっていますが、これは被災県に求償する形となっています。つまり、その大部分が被災者支援のための支出であり、県が独自の地震災害対策費として計上したのは、津波避難対策緊急支援事業(3,300万円)、津波情報のエリアメールのシステム開発(1,200万円)、民間住宅の耐震対策(3,700万円)と限られています。東日本大震災を教訓とし「いのちを守る」予算としては、あまりに消極的と言わざるをえません。県主導で、県民の命を守る施策の推進と市町村への財政支援を実施することを強く求めます。

次に、県内の放射能汚染についてです。
東京電力福島第1原子力発電所の事故以降、県では県内の大気、水道水、食品、土壌、海水、下水道汚泥などの、放射線量、放射能濃度を計測してきたことは大いに評価したいと思います。なぜならば現状を知るということがなければ風評や不安を拡大させるばかりでありしっかりとした対策も打ち出せないからであります。補正予算においても放射能測定調査機器整備費が計上されておりモニタリングポストやゲルマニウム半導体検出器などを設置していく事は、県民に現状を知らせる取組みとして大いに期待するものであります。しかしながら現状の測定結果から、健康の影響のあるレベルではないことが確認されていますが県内から放射能物質が検出されるという事は誠に憂慮すべき事態であると言わざるをえません。
なかでも、学校給食の食品検査に市町村が踏み切らなければならないように食品に対する安全の確認が求められています。原発事故の影響は半年を過ぎてなお、県民に大きな不安を与えている現在、県民、消費者が食に対する不安を払拭するまでは、できるだけ多くの検査の実施が必要と考えます。牛肉の検査については、今後、県独自で実施するとのことでありますが、着実なスクリーニング及び、検出時の非常態勢の構築を要望します。
さらに、検査の実施と結果の早い公表が風評被害防止につながると考えます。
公表については、県内市町村での独自検査と県の検査結果と合わせ、お互いにリンクをはるなど、知りたい情報が簡易に得られることで、県民の方々の安心への信頼を増すと考えます。各自治体と連携してわかりやすい情報提供に努めると共に県民生活の安心安全確保の為、県が率先して役割を果たすように求めます。

次に県土整備について申し上げます。
 補正予算案において公共・県単独の土木事業費として42億余万円が計上されております。東日本大震災を受けてハード対策による安全の確保という事に県民の期待も高まっています。県民の利便性の向上の為に計画的に県土整備を進めることも重要ですが、今一度、台風や地震などの災害から県民の安全確保を図るという観点で県土整備を見つめなおし任に当たる事を求めます。

次にパトカーへのAED搭載モデル事業についてです。
この事は、平成22年度第1回定例会において我が会派が提案したものであります。
地震や災害時など有事に警察の果たす役割は大変重要であるとともに、日々街中を巡回するパトカーは人命を救助するという場面に遭遇する機会が多い中で救助のためのAEDがパトカーに装備されることは大いに評価するものであります。
今後も一人でも多くの生命を守るために災害時に即応できる資機材もパトカーに装備するように求めます。

次に、ソーラープロジェクトについてです。
これまでの住宅用太陽光発電の普及促進は、国・県・市が補助制度を確立したことにより、一定の成果が出てきたと考えられます。今回は県が単独で、共同住宅等へも補助の拡大を行うことは新たなエネルギー構想への一歩と考えます。しかし、年度途中のあらたな補助事業に戸惑う県民・自治体もあると思われます。国の補助制度の新設も求める一方で、市町村への説明、理解等、これからということで、窓口で県民や市町村の担当者が困るようでは、新しい施策のスタートが良いものにならないので、周知をしっかりと行うよう求めます。
あわせて、今回メガソーラーの導入支援や公共施設、民間事業所、共同住宅への太陽光発電設備設置促進拡大に向けた調査・検討の予算が盛り込まれています。新エネルギー導入に意欲的な事業者、県民の期待に応えられるような仕組みづくりに取り組むように求めます。

次に、県有施設省エネルギー対策推進費についてです。
県庁、本庁舎等の蛍光灯をLED化にするという補正予算案が提出されました。
この「庁舎LED化」については、平成21年第1回定例会及び平成22年第3回定例会で、地球温暖化対策におけるCO2排出量削減、省エネの観点から県有施設等へのLED照明の導入を“我が会派”が提案し、その後、提案に基づき、LED照明の試行設置がおこなわれ、導入されてきたものであります。
現状で、おおよそ3,600本あまりが導入されており一般的な蛍光灯をLED化すると、電力使用量が従来の蛍光灯に比べて約半分になるとの事です。あくまで推計ではあるものの今回の9月補正予算で計上されている本庁庁舎の導入分、これを含めますと県全体の電力削減量は約50万KWに上るとの考えが示されました。
蛍光灯のLED化はスマートエネルギー構想の柱のひとつでもある「省エネルギー」を進めるための大変重要な取組であります。
LED照明の技術革新ならびに価格面などを注視しながら県有施設のLED化を進めることを求めます。

次に、定県第66号議案 事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例についてです。
県内初の県から市町村へのパスポート事務移譲です。この事は、権限移譲の市町村格差是正のために県がかねてより用意を進めていた近隣市町が連携協力して権限移譲の受け皿となるものでもあり評価するものであります。今後は、移譲事務交付金を含め、まだ課題もありますが、来年のオープンに向けて協議調整を行い、今後の運営に事故やミスがない県民に利便性の高いパスポート発行事務ができるよう求めます。

次に、地方分権に向けた取り組みについてです。(総務政策)
第2次一括法案により、県から市町へより一層の権限移譲が進むことになりますが、混乱や遅滞なく事務が移譲されるよう、本県としてもよく配慮されること、県民生活に支障をきたすことがないよう対応されることを求めます。また、この期を生かし、県としても更なる行政改革を進めていただきたいと思います。
 また、現在、横浜市・川崎市・相模原市という県内の3政令指定都市を含む指定都市市長会が新たな大都市制度の創設にむけ研究会を立ち上げましたが、こうした動きに比べると、本県の考える広域行政のあり方、今後の方向性を広く外に打ち出せているのか非常に心もとなく、このままではこの議論の中で本県の存在が埋没するのではないかと危惧するものであります。
地方分権の流れが加速する中、場合によっては他都県との連携も含め、新たな地方のあり方に向けた本県としての姿勢を明確に内外に示すべく取り組まれるよう求めます。

次に、NPO法人に対する寄付促進の仕組みについてです。(県民企業)
県民側、NPO側両方にとってもNPO法人に寄付をするということの社会的意義がまだまだ浸透していません。これから県は、NPO法人を条例に指定していくわけですが、説明や情報をわかりやすく行い、市町村としっかりと連携をして日本での寄付社会がすすむように県の役割を果たしていくよう求めます。

次に、医療のグランドデザインの策定についてです。
 知事は医療に関する諸課題である、救急医療や周産期医療の人材不足や環境の悪化、また、少子・高齢化に伴う高齢者医療のさらなる需要などの課題解決に向けて、8月から、医療グランドデザイン「策定プロジェクトチーム」を設置し、検討を始めております。
しかしながら、検討項目が多岐にわたり、様々な保健福祉関連の計画と整合性をはかる必要性があり、更にこのグランドデザインは10年にも及ぶ長期計画と聞き及んでいます。平成24年の3月には策定するという強行軍であり、短期間に集中した議論が必要であります。知事の言う「いのち輝くマグネット」を実現するためにも、安心・安全な医療提供に向けて任にあたるように求めます。
 

 次に、特別養護老人ホームについては、第5期高齢者保険福祉計画においても、入所待機者の解消に向けて整備を促進するとともに、低所得者の負担軽減のためのユニット型と従来型多床室との合築施設の整備についても柔軟に取り組むようよう求めます。

最後に、行政代執行に要した費用の督促に対する審査請求に係わる諮問についてです。
県民の安全の観点から今回の行政代執行が行われたことは明らかであり、そのための費用に県税が使われていることは大変に遺憾であります。今後審査が開始されれば、引き続き本県の見解をしっかりと主張すると共に再びこのような事案が起きないよう対策を求めます。
 
以上、縷々意見を申し述べて参りましたが、黒岩知事のリーダーシップはまだまだこの程度で止まらないものと信じております。議会の指摘を真摯に受け止め予算執行にあたるのは論におよばず、これからの新年度予算編成に向けて、知事の真の力が発揮される事を心よりご期待申しあげまして、諮問第1号につきましては棄却、本日上程されました諸議案にたいして、賛成の討論といたします。

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